アルバイト、パート、派遣社員、契約社員……。低賃金で不安定な条件のもとで働く人たちが増えている。戦後最長の景気拡大期にあるといわれ、大企業を中心に業績アップが続く陰で、景気を下支えしながら顧みられない非正規労働者たちに、景気回復の実感はない。こうした中、固定化する格差に怒りの声を上げる動きも出てきた。昨年末に福岡市で発足したフリーターらによる労働組合の取り組みなどを取材した。
◇過激デモに込める思い
「おれたちを使い捨てるな」「何が自己責任だ」「みんな何で怒らないんだ」――。5月19日土曜日の夕方、週末の買い物客らでにぎわう福岡市中央区の天神・大名地区で、20〜30代の若者ら約90人がデモ行進した。手押しの台車に積んだスピーカーからロック音楽の爆音が鳴る中、ハンドマイクから過激なシュプレヒコールが1時間以上にわたって街に響き渡った。
彼らは、90年代以降の就職氷河期を体験したフリーターや失業者らで作る「フリーター/非正規雇用労働者ユニオンふくおか(FUF)」の呼び掛けに応じた若者だ。
FUFは昨年11月に発足し、組合員は現在13人。街頭でのビラ配りやデモ行進のほか、労働相談も受け付ける。賃上げ交渉中に解雇されたNPO法人勤めの男性のため団体交渉をして、解雇を撤回させるなどの実績も上げた。小野俊彦執行委員長(32)は「非正規労働者は解雇されても反撃する発想自体がない人が多い。組合としての実績を積み重ね、我々も企業と戦えることを示していきたい」と言う。
旧日本経営者団体連盟(日経連)は95年、労働者を基幹社員と有期雇用労働者に分けて人件費削減を図る指針を打ち出し、これを受けた政府は派遣労働の対象業種を拡大した。「これらが非正規労働者を急増させた」とFUFは主張する。「だらしないとか自己責任とか言われるが、我々の存在は作り出されたものだ」と。
ただし、デモは少し風変わりだった。「武装より女装」のプラカードを手にした女装の男性、がい骨のマスクをかぶってオモチャの銃を手にした女性、人民服やチャイナドレスを着た男女など、思い思いの格好を楽しみながら拳を振り上げた。驚いて立ち尽くすお年寄り。渋い顔の中年男性。笑いながら見守る若者。物珍しい行進に好奇の目が注がれた。
大名地区で食品業を営む中年男性は、デモ隊を見送りながら「非正規雇用で働く人がどう苦しいのか、正直言ってよく分からない」と困惑した表情。一方、買い物に来ていた同市東区の男性派遣会社員(31)は「何で仮装しているのかよく分からない」と言いつつ「自分も立場の不安定さや賃金の低さに不満や不安があるが抜け出せず、まさにワーキングプアの状態。彼らのような組合があるなら、待遇改善の相談に乗ってもらいたい」と話した。
デモには、非正規雇用問題に取り組む作家の雨宮処凛さん(32)も飛び入り参加した。雨宮さんも数年前までフリーター。喫茶店などで週5日働いても月収は10万円程度。食べていくのにやっとの生活でも「悪いのは自分」と思っていた。上司から「おまえの替わりはいくらでもいる」などと言われてリストカットが止まらなくなった時期もあったという。
デモを終えた雨宮さんは「みんなバラバラに孤立させられている中、こういう組合に集まって声を上げることが大事だと思う」と話した。小野委員長は「僕らのやり方に賛否はあるだろうが、新しいスタイルでこの問題を若い人に知らせたい。楽しんでやっていれば、伝わることもあるはず。路上から新たな労働運動を始めたい」と言葉に力を込めた。
◇企業モラル著しく低下、既存労組も待遇改善支援を
労働問題に詳しい市川俊司弁護士(県弁護士会所属)に、非正規雇用労働者急増の背景や問題点を聞いた。
――なぜ90年代に非正規労働者が急増したのか。
市川 バブル崩壊を機に企業はリストラで正規社員を解雇して非正規社員で穴埋めしてきた。人件費は昔から固定経費だったが、いわば聖域に切り込んでコスト削減を図ってきた。経営者として最も安易なやり方であり、経営責任を労働者に押しつけている。この十数年で企業のモラル低下は著しい。
――非正規労働者からはどんな相談が。
市川 契約更新を拒否されたり、契約期間中に解雇されたという相談が多い。労働審判や裁判に持ち込んで解決することもあるが、彼らは基本的に泣き寝入りしている。文句を言うより次の仕事を探すことを優先してしまうからだ。
――非正規労働者の置かれている状況は。
市川 低賃金でいつ解雇されるのか分からない不安定な立場に置かれ、何かトラブルがあっても解決してくれる組合もない状況にある。正規雇用労働者のような安定した雇用の仲間から外されワンランク下の労働者になってしまっている。
――この状況が続くとどうなるのか。
市川 フランスでは雇用問題などを背景にした暴動が起きた。格差が固定すると社会不安が起きる。非正規雇用から正規雇用に乗り換えられる仕組みを作ることが大切だ。
――フリーターたちが独自に労組を作り待遇改善に取り組み始めた。
市川 若い人たちには現状に対して「許せない」という怒りのマグマがあるのだろう。自発的に新しいやり方で共感を集めて組織化しているのは立派なことだ。彼らのやっていることは労働運動本来の姿ではないか。
――既存の労働組合は何をやっているのか。
市川 連合はもっと早く非正規労働者に門戸を広げて彼らの待遇改善を支援すべきだった。ようやく手をつけ始めているが緊急の課題としてやるべきだ。そのためには非正規雇用で働く人も組合員として連帯の輪の中に入れるべきだ。
――非正規労働者ももっと声を上げるべきでは。
市川 声を上げなければ、立場は何も変わらない。黙っているから経営者もやりたい放題になっている。「気に食わないから解雇」なんてざらにある。解雇ルールに対する経営者の認識も変えていく必要がある。
◇社会保障システム、将来崩壊の恐れも
総務省の労働力調査によると、97年に1152万人だった非正規労働者は、今年1〜3月平均で1726万人と10年間で574万人も増え、1・5倍に。今や雇用者総数の33・7%と3人に1人の割合だ。特に若年層(15〜24歳)ではほぼ2人に1人となっている。
西南学院大法学部の菊池高志教授(労働法)は「人件費抑制は国際競争を勝ち抜くための手段になっており、非正規雇用を増やす流れは簡単には是正できない」と話す。
非正規労働者の中には低所得のため国民年金や国民健康保険に加入することができず、社会保障システムから漏れている人も少なくない。菊池教授は「このままでは年金制度が維持できなくなるだけでなく、彼らが年を取れば生活保護を受けることになり、将来的には膨大な社会的コストを要して社会保障システム自体が崩壊する恐れすらある」と警告する。
Yahoo!ニュースhttp://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070608-00000182-mailo-l40
誰かが動かないと何も変わりませんから。
いいことだと思います。
一日一回応援クリックをお願いします。
→
このブログは人気ブログランキングで●位です。 →
転職・転職活動ブログランキング(クリックしていただけると、このブログの順位が上がります)